芸術とはなにかを語る前に、人類とはなにかを考える必要があります。

人類とは、自然と共生し、互いに力を合わせ永続を求める存在である。私はこの思想のもとで、芸術を通じて何ができるかを一貫して追求してきました。

今日、我々はあまりにも自然を無視し、犠牲にしています。極度に発達した科学技術によって、他の生物はもとより人類自らの存続が危ぶまれています。直面するこの最大の脅威に我々は立ち向かわねばなりません。

その第一歩として肝要なのは、原点に立ち返ることだと思うのです。

生命の原点、つまり我々のルーツである最初の生命はどのように誕生したのか。諸説あるものの、水と鉱物(ミネラル)というふたつの存在が決定的に重要であり、両者が生命を生じさせたことは間違いありません。私は、生物学者の出自を持つ芸術家として、約40億年前に地球が生命を育んだプロセスを追体験しようと構想しました。当時と同じ素材、同じ方法によって作品を生み出すことで、現代という時代に生命をもう一度誕生させようと考えたのです。だからこそ私の作品はすべて、水、鉱物、大気、熱、重力など生命が出現した当時に地球上に存在した物質とエネルギーを利用します。こうして生まれた作品たちは、新たな生命体であり、我々生命とは何者なのかという問いかけでもあります。

現代美術家 中村元風